ある日から私は夢を見るようになりました。寂兎くんの夢ならとても幸せだったのですが、残念ながら内容は彼の夢ではありません。それはとても不思議で歪んだ世界の中。
今日も私はその夢の中にいました。私の茶色の髪の毛は、夢の中では色素が抜け落ち真っ白な色になってしまっています。水色のワンピースに白いエプロンドレス、そして頭には黒いリボンのカチューシャ。私はこのような格好をしていることで有名な人物をよく知っています。ルイス=キャロルをちゃんと読んだことはなかったのですが、雑貨屋さんに行けばよくこのモチーフを見かけたものです。私は不思議の国の中に迷い込んだアリスでした。
私はアリスとは違い毎晩毎晩この世界に迷い込みます。いつからのことだったでしょうか。もう漠然としていてあまりよく覚えていません。日常自体に変化がほとんどなかったものですから。おかげさまでだいぶん私はこの世界に順応していました。太陽が出ているのに夜みたいに薄暗い荒野を一人で歩くことは確かに怖くないといえば嘘になります。でも、私は私がアリスだとするならば、兎さんは当然彼だと思ったのです。彼が私を夢で呼んでる。それか、私は夢の中でもあの寂しい兎さんと書くあの人を追いかけている。そのどちらかのような気がしてならなかったのです。彼どころか、兎の影すら見ませんでしたが。
なに一つの手荷物も持たずに今日も私は白夜の下を歩きます。一見すると砂漠みたいな場所で、ヒールがどこかで埋まってしまうような気がして怖かったのですが、ずっと地面は固いままでした。
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