さて、君が失っているものは何だい?

私が夢の中での旅を何故続けたのか、それは私にもどうしてなのかわからなかったりします。

ただ、そうしたほうがいいようなそんな気がして歩いていました。そしてとうとう私は出会ってしまいます。出会った瞬間、「ああこれはあの白い旗よりもまずいものだ」とすぐに気が付きました。それでも普段そうしているように自分から話しかけてしまったのは、私の意思でというよりは口が勝手にいつも通りのことをしたといってしまっていいでしょう。

「あなた、どうしてそんな恰好をして動かないの?」

空も地面もない空間でなぜか重力に逆らったようなポーズをとった男性に問いかけると、男性は動かしにくそうに首をこちらに向けながら「それは吊るされているからさ」と言い切ります。でも吊るされているわりには腕が自由です。そして吊るすのに使われるはずの鎖は下から生えていました。私はさらに問いかけます。

「あなたは誰?」

「見てのとおり【吊るされた男】だよ。でもここではたまたまそういう呼ばれ方をしているだけで、もっと違う名前がある」

「違う名前?」

「そう。破壊者と呼ばれることもある。でもきっとそうだな、君に向けてならこういう名前が似合うんだろう。自浄作用とか、本能とか」

「…何が言いたいの?」

「君は何を失っているか知ってる?」

「……」

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